不動産の鑑定評価について

土地や家屋などの不動産は、私たちの大切な財産です。 これら不動産の価値は、私たち人間が、不動産を利用してはじめて生まれます。 また、不動産の価格によって、不動産の適正な利用のあり方も異なってきます。 不動産の適正な価格を示すことで、人と不動産のより良い関係を築く・・・それが、私たち不動産鑑定士の仕事です。

鑑定評価制度のあらまし

昭和30年代、わが国では、高度成長に伴って地価が急騰し、道路などを建設するための公共用地の取得や、生活に必要な住宅地の取得が困難となりました。さらに、地価の高騰は、劣悪な宅地開発や投機的な土地取引などの問題を引き起こし、国民経済の発展や国民生活の安定に、重大な影響を及ぼしました。
こうした問題を解決する施策の1つとして、昭和38年に、「不動産の鑑定評価に関する法律」が公布・施行され、不動産の鑑定評価制度が生まれました。この法律では、不動産の鑑定評価を行うことができる高度な専門家としての不動産鑑定士、そのための国家試験や登録制度などが定められました。 また、建設大臣の諮問を受け、昭和39年に、不動産鑑定士が不動産の鑑定評価を行うための統一的な基準として、はじめて「不動産の鑑定評価基準」が答申されまた。
その後、昭和44には、それまで答申されていた各種の評価基準や実践的な評価成果の集大成として鑑定評価基準が定められました。 さらに、「不動産の鑑定評価基準」は、バブル期の平成2年、不動産の証券化が広がりはじめた平成14年の2度にわたり全面改定されています。こうした鑑定評価基準の全面改定の他にも、不良債権の担保不動産,不動産の証券化や減損会計など、時代のニーズや不動産を取り巻く環境の変化に対応して、様々なガイドラインが示されています。 このように、不動産の鑑定評価制度は、40年以上の歴史と、高度な専門知識に裏うちされた信頼ある制度です。

不動産の鑑定評価とは

不動産の鑑定評価とは、土地や建物などの不動産の経済価値を判定し、その適正な価格や賃料を示すものです。 不動産の鑑定評価では、不動産の経済価値を、

  • その不動産に投下された費用がいかほどであるか
  • その不動産が市場でいかほどの値段で取引されているか
  • その不動産を利用することで、どれほどの収益が得られるか

といった3つの観点から分析・判定します。 また、不動産の鑑定評価は、以下のような手順で実施します。

(1) 評価対象の確定
依頼事項に基づき、評価対象となる不動産の所在や範囲、評価基準日などを確定します。

(2) 現地確認
(1)で確定した不動産について、現況や権利関係などを実際に現地に赴き確認します。

(3) 資料の収集
人口や土地利用に関する地域の基礎情報,周辺での取引情報など、鑑定評価に必要な情報を収集します。

(4) 分析・評価
収集した資料に基づき、市場動向や価格形成の状況を分析します。さらに、評価対象不動産について、各種の評価手法を適用し、価格を多角的に試算します。

(5) 鑑定評価額の決定
分析・評価結果を再検討し、最終的な鑑定評価額を決定します。

(6) 鑑定評価書の作成
以上(1)~(5)の成果を鑑定評価書としてとりまとめます。最後に、こうして作成した鑑定評価書には、不動産鑑定士の署名・押印がなされ、調査内容や評価結果に対する責任の所在を明確にした上で、依頼者に発行されます。

不動産鑑定士とその業務

不動産鑑定士(または不動産鑑定士補)とは、国家試験である「不動産鑑定士試験」に合格し、さらに所定の実務修習を経て、国土交通省に備える不動産鑑定士名簿(または不動産鑑定士補名簿)に登録を受けた者をいいます。 これらの制度は、すべて「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づいており、国家資格を持つ、不動産鑑定士(または不動産鑑定士補)でなければ、不動産鑑定評価を行うことはできません。 不動産鑑定士は、こうした国家資格制度に基づき不動産の鑑定評価を実施するとともに、不動産に関する専門知識を活かした各種コンサルティング業務を実施します。

不動産の鑑定評価業務
不動産鑑定士の実施する中心的な業務であり、不動産鑑定士(又は不動産鑑定士補)でないと、法律上、不動産の鑑定評価を行うことはできません。具体的には、国土交通省の実施する地価公示や都道府県の実施する地価調査のための鑑定評価、相続税や固定資産税の課税標準の基礎としての鑑定評価といった公的評価をはじめ、公共用地の取得価格ための鑑定評価や一般の不動産取引のための鑑定評価などを行います。また、不動産の証券化など、法律上、鑑定評価が義務付けられている場合もあります。

コンサルティング業務
不動産鑑定士は、不動産の鑑定評価を行う過程で、その不動産の最も有効な使用方法を分析・判定します。不動産鑑定士は、高度な専門知識や客観性を活かし、不動産の有効活用や不動産投資に対する助言など、不動産に関する様々なコンサルティング業務を実施しています。